「擦文土器(さつもんどき)」とは?
「擦文土器」の「擦文」とは、土器の表面をヘラで擦って仕上げたあと(擦痕:さっこん)のことです。
多くの擦文土器は、上半分に文様が描かれています。その下をよく見てみると、細かいすじがたくさん付いているのが分かります。これが擦痕です。木製のヘラを使ったため、木目のあとが付いているわけです。表面に縄目の文様がある土器を「縄文土器」と呼ぶのと同じように、表面にヘラで付いた擦痕があることから「擦文土器」と呼ばれています。
このように、表面をヘラで擦って仕上げる土器の作り方は、同時代の本州で作られていた土器「土師器(はじき)」の作り方が伝わったものです。一方、上半部に文様を描くのは、土師器にはない北海道独自の要素と言えます。
ところで、擦文土器の内側を見ると、擦痕はなく、なめらかに仕上げられていることが分かります。外側には、あえて擦痕を残しているとも言えるわけで、擦痕には装飾的な意味があったとも考えられます。
擦文土器には、かまどでの調理に使う「甕」、食器として使う「坏」やそれに脚が付いた「高坏」などの形がありました。こうした器の種類も、本州の土器に共通するものです。土器以外にも、かまどを備えた四角形の竪穴住居、鉄製品の普及など、擦文時代の文化が本州からの影響を大きく受けて成立したことを示す要素は、様々な側面に見ることができます。