石刃鏃(せきじんぞく)石器群


 石刃鏃(せきじんぞく)は、石刃から作られた鏃(やじり)です。石刃とは、石を薄く、平行な形に打ち割ったもののことです。石刃を元にした石器作りは日本列島では主に旧石器時代に見られる技術であり、石刃で縄文時代の石器である鏃を作るのは、かなり特殊なことです。

 実は、この石刃鏃を作る技術は、大陸の東北アジアから伝わってきたものと考えられています。旧石器時代が終わった後、東北アジアの大陸側では石刃を作る技術がまだ広く残っていました。そして、約8500~8000年前の一時的な気候寒冷化とともに、大陸の人々の南への移動が起こり、その影響で北海道にも、大陸の北の地域の技術が伝わってきたのだと推定されています。



 ここに展示した石刃鏃やそれに関連する石器で、注目に値するのはその技術の高さです。石刃の中には、厚みが薄いのに10cm以上の長大なものもあります。下準備の加工、石刃を打ち割るときの力を加える位置や力加減など、少しでも失敗すると、思い通りの形の石刃を取ることはできません。

 さらに、石刃から石刃鏃を作るには、石刃を細かく打ち欠いて形を整えています。石刃鏃の表面をよく見ると、非常に細かい加工のあとを見ることができます。その繊細な加工にも注目してみてください。